生産者情報
新時代ローヌの旗手
Domaine Pichat
ドメーヌ・ピシャ
シラーは世界中で生産されている国際品種ですが、コート・ロティほど繊細でエレガントなワインを生み出す地は他にありません。
「コート・ロティ(=焼けた斜面)」という名から、タンニンが強く、アルコールが高いワインが連想されがちですが、それは全くの逆です。
高緯度と冷たい季節風(ミストラル)の影響を受ける北ローヌはシラーが完熟できる北限とも言え、その中でもコート・ロティは最も冷涼なアペラシオンの1つに数えられます。
また、北ローヌではスタイルの変革も起こっており、1990年代から2000年代にかけてロバート・パーカーが賞賛した濃厚で豊満、酸の穏やかなスタイルから、抽出・オークのニュアンスを抑えたフィネスとエレガンスに溢れたスタイルが主流になりつつあります。
このような進化を見せるシラー最上の地では、ギガルやシャプティエなどのトップドメーヌが長らく市場を牽引してきましたが、一方で小さなワイナリーもモダンな手法を取り入れながら質の高いワイン造りに邁進し、より存在感を高めています。
その代表格の1つとして近年注目を集めているのがドメーヌ・ピシャです。
ドメーヌ・ピシャの当主であるステファン・ピシャはボーヌの醸造高校を出て、カリフォルニアのソノマとボルドーで研鑽を積み、ローヌの地に帰ってきました。
ステファンの家系は代々続く栽培農家であり、野菜や果物の栽培がメインでブドウは全て売っていました。しかし、手塩にかけて育てたブドウが売られた後、どう扱われるか分からない事にフラストレーションを感じていたステファンが、2haの畑を引継いだ後ワイン生産を開始。
ファーストヴィンテージは2000年、900本のみの生産という規模でしたが、現在畑は5haを越え、年間およそ20,000本のワインを生産しています。
所有畑について特筆すべきはその恵まれたラインナップにあります。
コート・ロティは3つの村にまたがるアペラシオンですが、その中でも多くの優れた畑が集中し、コート・ロティの神髄とも言えるアンピュイ村に畑を所有。アンピュイ村の代表的な畑の1つであるレ・グランド・プラスは、ロバート・パーカーが自書「ローヌワイン」の中で「ギガルの三銃士と並びコート・ロティの中で最も深遠なワイン」として挙げている程の偉大な畑です。
アンピュイ村にワイナリーを構えるドメーヌ・ピシャでは、名高いレ・グランド・プラスをはじめ、シャンポン、プロンブなど大部分の畑をアンピュイに所有。
IGPワインの区画もコート・ロティに隣接しており、一部コンドリューにも畑を持ちます。
彼のモットーはフィネスとエレガンス、熟成できるポテンシャルのあるワインを造ること。
栽培はリュット・レゾネで行い、除草剤、殺虫剤は使用せず手作業で収穫を行います。 醸造では伝統に則りながらモダンなスタイルを追求。
コート・ロティでは無除梗、大樽での長期熟成が伝統的な手法ですが、ドメーヌ・ピシャではキュヴェによって除梗率を使い分け、ステンレスタンクで発酵後、400Lの樽でMLF発酵・熟成を行います。
新樽比率はヴィンテージによって変えますが、熟成期間は最長でも30ヶ月ほどに留めます。こうして出来る彼のワインは美しいコート・ロティの肉付きの良さがありながらも、滑らかなタンニンが溶け込んだシームレスで洗練されたテクスチャーを持つのです。
熟成のポテンシャルがありながら若いうちでも楽しめるスタイルで、ワイン・アドヴォケイト誌からは「モダンスタイルのコート・ロティを作っている傑出したドメーヌ、生産量は非常に少ないが、追いかける努力をすべき価値のあるワイン」、「ほとんど素性を知らない生産者からの嬉しいサプライズ」、「若くから楽しめるが、10年経っても楽しめるセンセーショナルなコート・ロティ」といった惜しみない賛辞が贈られています。
今後ますますの進化を期待させる才能溢れる造り手です。